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Santorum サントラム(伊)
概要
「万聖節生まれの子」「諸聖人の加護を願われた子」の意の中世の個人名より。
詳細
Franciscus de Sanctoro(1325年Messina(シチリア))1

父称姓。イタリア系。イタリア語読みはサントルムか。アメリカの政治家リチャード・ジョン・サントラム(Richard John "Rick" Santorum:1958.5.10~)の姓。彼の父アルドー・ サントラム(Aldo Santorum)はイタリア共和国北部トレンティーノ=アルト・アディジェ州トレント県の町リーヴァ・デル・ガルダ (Riva del Garda)に1923年1月9日に生を受けた。渡米した理由は不明だが、1942~1946年米空軍に在籍し名誉除隊後、臨床心理学の 博士号を獲得している2。サントルムという姓はイタリアでは珍しいもので、アルドーの出身地 リーヴァ・デル・ガルダに分布が集中している地元密着の名である。

ラDies festus sanctorum omnium「諸聖人の日、万聖節」3に由来する。これは、一年の内に一度 全ての聖人を記念する日の事で、11月1日に行われる。この日に誕生した赤子に、生まれた日に因んでSanctorus 3、或いはSantoro4と命名した中世の個人名が起源となっている。 またマクシア(Mauro Maxia)やパローディ(Bent Parodi)の説明によると、ラEcclesia sanctorum omnium「諸聖人の聖体拝領」 に由来し、諸聖人の加護があらんことを願って、生まれてきた子に与えた祝賀個人名に由来する場合も指摘している。 上掲のシチリア島メッシーナの記録では、前置詞のdeが用いられているが、他のヨーロッパ諸国とは違い地名に用いて いるのではなく、父称に前置する事で「~の息子」を意味するイタリア独特の表現方法によっている。 以上、纏めると「万聖節生まれの子」「諸聖人の加護を願われた子」の意の中世の個人名に因む姓ということになる。

同じ語源のサントーロ(Santòro)姓が本来の民衆イタリア語の形であり、Santorumは語源となった古典ラテン語を意識した 衒学趣向の名前である。この名によって格式の高さを演出しようとしたのだろう。然し実際は、Santorumの形は中世 ラテン語の形であり、仕事や家庭における文書や教会の記録に用いられていたこの言語の記述をソースとしていた為、 この様な綴りとなった4
[Francipane(2005)p.219,Minervini(2005)p.437-438,Rapelli(2007)p.617,Parodi(2006)p.260-261,Lurati(2000)p.425, Rossoni(2000)san項,Maxia(2002)p.281]
◆ラsanctōrum(複数属格形)「聖人達の」(sancto+-orum(複数属格語尾)←古ラ-osum←PIE*-es-om(複数語尾+向格・対格語尾))←sanctus「聖人、使徒;聖なる、不可侵の」(単数対格sanctum: 伊,西santo,仏saint,カタルーニャsant)(過去分詞形)←sancīre「(宗教上の諸式にのっとって法律・条約・協定 等を)承認する、是認する、(法を)制定する、聖別する」←PIE*sa-n-k-(鼻音化形)←*sak-「神聖にする」(ウンブリアsah(a)ta 「神聖な」,ヒッタイトšaklai-「儀式」)5。対応がイタリックとアナトリアの両語派しかなく、 祖語に遡るか疑わしい。
1 Parodi(2006)p.260-261
2 http://www.legacy.com/obituaries/staugustine/obituary.aspx?n=aldo-santorum&pid=147924440
3 http://www.cognomiitaliani.org/cognomi/cognomi0017an.htm
4 Rapelli(2007)p.617
4 http://www.ireference.ca/search/Italian%20name%23Surnames/
5 英語語源辞典p.1208、Watkins(2000)p.73、Pokorny(1959)p.878、Buck(1949)p.1475

執筆記録:
2011年5月29日  初稿アップ
PIE語根San-t-r-um:1.*sak-「神聖にする」;2.*-to-分詞形成接尾辞;3.*-es複数語尾; 4.*-om向格語尾

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