Klee クレー(独)
概要
①中高独klē「クローバー(の生えた芝生土塊・草地)」に由来。「シロツメクサが生える場所の住人」或いは「クローバー栽培農家、芝生土塊職人」の意。
②中低独klēf,klē「絶壁、岩礁、岩、岩窟」に由来。
③男名Nicolaus(ギリシア語で「勝利+民」の意)の古い異形Cleweに由来。
④男名Clemens(←ラclēmēns「温和な」)からの変形から生じた。
詳細
Herman Klee(1400年Nürnberg(バイエルン州))1
Cuncz Klee(1401年Nürnberg)1
fratris Petri Cklee de Wienna(1458年Wien(オーストリア))2
Niclas Clee(1467年Kadaň(チェコ、ウースチー州))13
Fabianus Clee de Trochenytz(1509年Erfurt(テューリンゲン州))4
Iohannes Kle frater M. Petri Forchemii(1534年Erfurt)5
Iohannes Clee(1544年Merseburg(ザクセン=アンハルト州))6
Ioannes Khlee(1549年Wien)7
Jonathas Klee von Quedlinburg(1609年Goslar(ニーダーザクセン州))8
Matthaeus Klee Rohrbornensis(1629年Erfurt)9
Josephus Cle(1695年Lucerne(スイス))10

①居住地姓、職業姓、ニックネーム姓。中高独klē「シロツメクサ、クローバーの生えた芝生土塊・草地」11,中低独 klē「シロツメクサ」12に由来する。「シロツメクサが生える場所の住人」、又は「クローバー栽培農家」を表した。 シロツメクサは家畜の飼料になるため、その専門の栽培農家が名乗ったものと考えられる。或いは、 シロツメクサの看板や屋号を持った住居の住人であった可能性もある。又、シュヴァーベン方言Kleeは「芝生」の意味に発達しており 13、この地方では「芝生職人、こけら板職人」を意味する姓である場合もある。又、シュヴァルツ(Ernst Schwarz)は 本姓の意味を「シロツメクサを摘む人(Kleeschneider)」としている。この場合は趣味が名付の起源となった。ナウマン本によると 姓はCleの形で1398年の記録を挙げるが(これが初出と考えられる)、他書で未確認で採録地も不明。

[Gottschald(1982)p.291, Zoder vol.12(1968)p.896, Kohlheim(2000)p.374, Bahlow(2002)p.269, Naumann(2007)p.160, ONC(2002)p.347, Heintze(2014)p.178, Scheffler-Erhard(1959)p.185, Schwarz(1973)p.163, Planta et Schorta(1986)p.397, Morlet(1997)p.552]
②居住地姓。中低独klēf,klē「絶壁、岩礁、岩、岩窟」14に由来。
[Gottschald(1982)p.291, Zoder vol.12(1968)p.896, Kohlheim(2000)p.374]

Wernher KlewenWernher Klewe(1358年Delémont(独Delsberg)(スイス、ジュラ州))15
Wernli des Clewen sun(1452年Olsberg AG(スイス、アールガウ州))16Wernly des Clewen sun(1455年、場所不明)17
Werlin Clewe von Buttkon(1467年Eptingen(スイス、バーゼル州))18Werlin Klewe von Butkon(1467年Eptingen)19

③父称姓。男名Nicolaus(ギリシア語で「勝利+民」の意)の頭音消失形に由来する近世初期によく用いられた男名Clewesの異形Clewe(1422年Bern (スイス))20に由来する。語末-sの脱落は属格語尾に誤解され、異分析によって省略されたものだろう。 cf.マッキンリー(McKinley①)
[Gottschald(1982)p.291, Kohlheim(2000)p.374, Naumann(2007)p.160, Berger et Etter(1961)p.154]
④父称姓。男名Clemens(←ラclēmēns「温和な」)の異分析と民間語源によりクレーマン(Kleemann:「シロツメクサ男」の意と解された)という姓が 派生した。Conradus dictus Cleman(1307年Worms(ラインラント=プファルツ州))21という古い用例も 見られる。ここから逆成(back-formation)によりKlee姓が生じたケースが有る。cf.クリムト(Klimt)
[Gottschald(1982)p.291]
有名人にスイスの画家パウル・クレー(Paul Klee:1879.12.18 Münchenbuchsee(ベルン州)~1940.6.29 Muralto(ティチーノ州))。
◆中高独,中低独klē「シロツメクサ」←古高独klē(o),clēo,古ザクセンklê「シロツメクサ」←ゲルマン*klaiwam,*klaiwaz(a語幹男性/中性名詞) 「シロツメクサ」(cf.ゲルマン*klaiѣrōn「シロツメクサ」(英clover,蘭klaver,デンマークkløver))←PIE*gloi-wo-(o階梯+形容詞形成接尾辞) ←*glei-「くっつく」(ギgloiós「膠(ニカワ)、タール」,ラglūten「膠」,古アイルランドglenim≪1単現≫「付着する」,古教会スラヴglěvŭ「粘液」) 22
1 Scheffler-Erhard(1959)p.185
2 "Catalogo dei manoscritti in scrittura latina datati o databili per indicazione di anno, di luogo o di copista. vol.2, part.1"(1982)p.91
3 Schwarz(1973)p.163
4 Johann Christian Hermann Weissenborn "Acten der Erfurter Universitaet. vol.2"(1884)p.262
5 ibid. p.342
6 Georg Buchwald "Die Matrikel des Hochstifts Merseburg, 1469 bis 1558."(1926)p.177
7 Universität Wien "Die Matrikel der Universität Wien. vol.3 part.2"(1971)p.236
8 Zoder vol.1(1968)p.896
9 脚注4の文献p.546
10 Planta et Schorta(1986)p.397
11 Lexer vol.1(1872)sp.1609
12 http://www.koeblergerhard.de/mnd/mnd_k.html
13 Anton Birlinger "Wörterbüchlein zum Volksthümlichen aus Schwaben. vol.3"(1862)p.50
14 Lübben(1888)p.175
15 Heinrich Boos "Urkundenbuch der Landschaft Basel. vol.1"(1881)pp.328f.
16 ibid. p.895
17 ibid. p.937
18 ibid. p.1030
19 ibid. p.1031
20 ibid. p.732
21 Johannes Frey "Heiligenverehrung und Familiennamen in Rheinhessen."(1938)p.46
22 英語語源辞典p.242、https://en.wiktionary.org/wiki/clover、http://www.koeblergerhard.de/germ/germ_k.html

更新履歴:
2016年1月14日  初稿アップ
PIE語根①Klee: 1.*glei-「糊で貼る、くっつく」
②Kle-e: 1.*gleubh-「切る、割る」; 2.*-o- o語幹形成母音
④Klee: 1.*klei-「傾ける」

Copyright(C)2010~ Malpicos, All rights reserved.