父称姓。アメリカ合衆国の実業家スティーブン・ポール・ジョブズ(Steven Paul Jobs)の姓。姓自体は、彼の養子縁組先の夫妻の姓である。養父
ポール・ジョブズに関する情報はネットでも殆ど皆無で、民族的に何系の人物なのか全く判らない
1。ドイツ系のヨープス(Jobs)姓に遡るのではないかと思うが、
証拠が無い。取り敢えず、ドイツ姓Jobsに由来すると見て解説する。
独姓Jobsは主にドイツ語県北部に見られる姓で、特にザクセン=アンハルト州ヴィッテンベルク(Wittenberg)郡とアンハルト=ビッターフェルト
(Bitterfeld)郡に多い。旧約聖書のヨブ記の名祖で、同書の主要人物であるヨブ(Job:ドイツ語では「ヨープ」と読む)に因む男名に属格語尾が付随した形で、「Jobの子」を意味する。
ヨブは神から与えられた、様々な苛烈な試練に耐え信仰を守り通した事で知られ、忍耐や辛抱強さの模範とされた人物であった。彼にまつわる物語は
中世の間人気を集め、奇跡劇の題材に用いられた。Jobという表記は、聖書のラテン語訳であるウルガタ聖書における後ラJōb(us)の語形を踏襲した
もので、更にギI

bを経由してヘブライIyy

bhに遡る
2。語源は定かでは
ないが、ヘブライiyobh「憎まれた」、或いはその語源となったヘブライayyabh「~に敵対している(he was hostile to)」に由来するとされ
2, 3、
「迫害された、苦しんでいる、憎まれた(hated, persecuted, afligido)」を原義とする説
2, 4、「敵」を原義とする説がある
2, 5。
他には、「父(=神)はいずこに居わす」を原義とする説も存在する
6。これは、第一要素をヘブライei「何処に」
7、第二要素をヘブライābh「父」
8と
解釈しているのだろう。ābhの母音がōに転じているのは、早期のセム語の北西部方言に見られる音変化であるらしく、その影響を受けての
ものとされる。そして、この名前が後に前出の「憎まれた」や「敵」を意味するヘブライ語に再解釈され、語形が入れ替わったと説明されている
9。どちらが正しいかは不明。
ドイツでは、マルティーン・ルターが聖書を翻訳した際にHiobの語形を採用している。フランスでは、古期フランス語でこの名前は「愚直な、愚かな
(niais, sot)」の意味も表した
5。
[Gottschald(1982)p.252,Kohlheim(2000)p.351]
1 実父はシリア人の政治学者アブドゥルファター・ジャンダリ(Abdulfattah Jandali)、実母はジョアン・キャロル・シーブレ(Joanne Carole
Schieble)である。シーブレはスイス出自のアメリカ人の家系の人。養母のクララ・ジョブズ(Clara Jobs)の旧姓はハゴピアン(Hagopian)といい、
アルメニア系である。Hagopian姓はアルメニア西部方言の名で、Hakob(英James,Jacobのアルメニア西部方言対応形)の子孫を意味する。
2 英語語源辞典p.753
3 http://en.wiktionary.org/wiki/Job
4 ONC(2002)p.793、p.326、ランダムハウス英和大辞典p.1443、Tibón(1988)p.127、Reaney(1995)p.255
5 Morlet(1997)p.541
6 ONC(2002)p.326、Kohlheim(2000)p.351
7 http://en.wiktionary.org/wiki/%D7%90%D7%99%D7%A4%D7%94#Hebrew
8 英語語源辞典p.3
9 http://web.archive.org/web/20080629012940/http://www.bartleby.com/61/roots/S0.html
執筆記録:
20年月日 初稿アップ