Herbert de Gledstane(1296年Lanark(スコットランド南部))
1
William de Gledstanys(1357年Coldingham(スコットランド、ベリックシャー))
2
Andrew de Gladstan(1364年)
1
Andream de Gledstane(1451年Brechin(スコットランド、アンガス))
3
Jhone Gledstanis(1536年Dundee(スコットランド西部))
4
Harberto Gledstanis(1544年Glasgow:公証人)
5=
Harberto Gladstanis(1544年Glasgow)
5=
Harberto Gledstanys(1558年)
6=
Harbarto Gledstanis(1559年Dudhope(スコットランド、ダンディー))
7
George Gleadstone(1668年York(イングランド、ノース・ヨークシャー))
8
地名姓。英国の政治家ウィリアム・エワート・グラッドストン(William Ewart Gladstone:1809.12.29 Liverpool(マージーサイド州)~1898.5.19
Hawarden(ウェールズ、フリントシャー))の姓。スコットランド南部スコティッシュ・ボーダーズに多い姓で、特にガラシールズ(Galashiels)に
集住。同源異綴の姓に、グレッドストン(Gledstone:ウェスト・ヨークシャーに多い)、グレッドステイン(ズ)(Gledstane(s):稀姓)がある。
スコットランド南部サウス・ラナークシャーの村リバートン(Libberton)東部の小地名
グラッドストン(Gladstone)に由来する(地名はGledstanesとも称されている様だが
1、古風な綴りである)。微細地名の為、Google地図の最大拡大図でも
表示されないが、当地より600㍍北西にある耕地名
グラッドストン・ファーム(Gladstone Farm)は
地図に記載されている。この耕地名も、小地名Gladstoneに因む。地名の古い記録は、確認出来得る限り全て地名姓としての用例であり、
純粋に地名としてのものは見付けられなかった。上掲、古姓欄の1451年の
Andream de Gledstaneの人名の前に、
Waltero de Bigare
という名が見える(下掲、古文書校訂本の写真参照)
3。この人物の姓Bigareは、グラッドストンの南5.3㎞に位置する集落
ビガー(Biggar)の事に他ならない。Wikipedia日本語版の
ウィリアム・グラッドストン項に言及されているが、この政治家の先祖が住んでいた場所もビガー村であった。
地名の語源は中英glēde,glide「鳶」
9(>英glede「鳶」)+中英stan(e),stōn,ston(e)「石、岩」
10
(>英stone)よりなり、「鳶ヶ岩」の意
8, 11, 12。姓の古い綴りにしばしば現れる語末の-sは後代に添加されたもので
12、本来は複数語尾である。第二要素に英stone「石」を持つ地名・地名姓にこの様な複数語尾を付加したものがしばしば
見られる
10。恐らく風化作用によって、亀裂が入ったり崩壊した等の理由で、幾つかの岩が集まって形成されたように
見える岩塊を指したものではないだろうか。
[写真は問題の小地名グラッドストンの場所で、北から南に向けた景観。Google地図のストリートマップから拝借した。右の石造りの
建物の看板にGladstoneの文字が見える。この道を真っ直ぐ5.3㌔進むと、ビガー村に辿り着く]
[Reaney(1995)p.192, Bardsley(1901)p.320, ONC(2002)p.248]
◆中英glēde,glide「鳶」←古英≪ウェスト・サクソン方言≫glida,≪アングリア方言≫glioda,*gleoda「鳶(原義「滑らかに進むもの」)」←ゲルマン*
ʒliðōn(n語幹男性名詞)「滑らかに進むもの」(中低独glede「滑らかさ、鉛の鉱滓」,古ノルドgleða「鳶」)←*ʒlīðan,*ʒleiðan「滑らかに進む」(古英glīdan
「滑らかに進む」,古フリジアglīda「滑らかに進む」,蘭glijden「滑らかに進む」,古ザクセンglīdan「滑らかに進む」,中高独glīten「滑らかに進む」)←
PIE*ghleidh-「滑らかに進む」(ギkhlidḗ「柔らかさ、繁茂」)(拡張形)←(?)*ghel-「輝く」
13。
上掲の通り、PIE*ghel-「輝く」に遡らせる説が提唱されているが、意味・語形の発達に難点が有る。
1 Reaney(1995)p.192
2 Charles Wareing Endell Bardsley "English Surnames: Their Sources and Significations."(1815)p.493
3 "Registrum episcopatus brechinensis cui accedunt cartae quamplurimae originales. vol.2"(1856)p.90
4 ibid. p.319
5 ibid. p.278
6 ibid. p.280
7 ibid. p.205
8 Bardsley(1901)p.320
9 MED G巻 vol.2 p.154
10 MED S巻 vol.15 p.777
11 ONC(2002)p.248
12 Patrick Hanks,Kate Hardcastle,Flavia Hodges "A Dictionary of First Names."(2006)
13 英語語源辞典p.575f.、Pokorny(1959)p.429-434、Watkins(2000)p.29、http://www.koeblergerhard.de/germ/germ_g.html、
http://en.wiktionary.org/wiki/Appendix:Proto-Germanic/gl%C4%ABdan%C4%85
更新履歴:
2015年3月30日 初稿アップ