d'Ambrosio ダンブロージョ(慣用:ダンブロシオ)(伊)
概要
ギambrósios「不死の、神の」に由来するイタリア人男名Ambrogioに前置詞de「~から」がくっ付いたもの。「Ambrogioの子孫」が原義。
詳細
Angelus de Ambrosiis abate(1386年Barletta(プッリャ州))1
Jacobus Francischini de Ambrosiis(1396年Pistoia(トスカーナ州))2
Petrus de Ambrosis(1480年Milano)3
Bernardinus de Ambrosiis(1503年Venezia)4

父称姓。ベルギーのF1ドライバー、ジェローム・ダンブロージョ(ダンブロシオ)(Jérôme d'Ambrosio:1985.10.27 Etterbeek(ブリュッセル首都圏地域)~)の姓。 d'Ambrosioは明らかにイタリアの姓で、英Wikipediaにも彼はイタリア系としているが、詳しい出自が確認できない。ダンブロシオの読みは誤りで、 ダンブロージョと濁るのが正しい。男名アンブロージョ(Ambrogio)の異綴Ambrosioに前置詞de「~から」が前置したものが膠着した形に由来する。 「アンブロージョから」という表現で、「アンブロージョの子孫」を意味している訳である。Wikipedia日本語版に、"ラストネームだけを読むならば 「アンブロシオ」となる。(d'はミドルネーム)"(2014年11月現在)とあるのは誤り。苗字にミドルネームが膠着することなど、有る筈が無い。

アンブロージョ(Ambrogio)というイタリア男名は、ミラノ司教を374~397年に務めた聖アンブロシウス(Ambrosius:340年頃~397)にあやかって広まった。 彼はローマ帝国の高級官僚の息子として、ドイツはトリーアで誕生した。非常に偉大な業績を残した人物で、教会博士(ラdoctor ecclesiae)の 称号を送られており、「西方の四大教会博士」の一人に数えられる。祝日は12月7日(ミラノ司教に叙任された月日に基づく)。同じ「西方の四大教会博士」の 一人に数えられる聖アウグスティヌス(Augustinus:生没年354~430(北アフリカHippoの司教))の師。

名は、ギリシア語の形容詞ambrósios(ἀμβρόσιος)「神々の(of the immortals)、不死の、神の(immortal, divine)」5に 由来する。この形容詞はギámbrotos(ἄμβροτος)「不死の、神の」5に更に形容詞形成接尾辞-ios(<PIE*-yo-)が 接続した派生語で、t→sの変化は直後の前舌性音素による硬口蓋化が原因。
[Francipane(2005)p.77f.,Minervini(2005)p.49f.,Rapelli(2007)p.125,Lurati(2000)p.96,ONC(2002)p.24]
◆ギámbrotos←PIE*-m-tó-「不死の、不滅の」(ラimmortālis「不死の」(>英immortal), サンスクリットamṛtam「不死、不滅の」(>英amrita「アムリタ、甘露」),アヴェスタAmərətāt植物を司る女神アムルタート(原義「不死、不滅」))← (*ne「~でない」のゼロ階梯+*mer-のゼロ階梯+分詞・形容詞形成接尾辞)←*mer-「すり減らす、害する」6
1 Minervini(2005)p.49f.
2 August Potthast "Bibliotheca historica medii aevi."(1896)p.84
3 Lurati(2000)p.96
4 Henry Simonsfeld "Der Fondaco dei Tedeschi in Venedig und die deutsch-venetianischen Handelsbeziehungen.
5 英語語源辞典p.38、Liddell & Scott(1940)
6 英語語源辞典p.38、Watkins(2000)p.55、Pokorny(1959)p.735

執筆記録:
2012年1月21日  初稿アップ
PIE語根d'-A-mbro-s-io: 1.*de-, *do- 指示詞形成要素、前置詞・副詞語幹; 2.*ne-「~でない」; 3.*mer-²「害する、死ぬ」; 4.*-t- 行為名詞形成接尾辞; 5.*-yo- 形容詞形成接尾辞

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