M. Dornier(1200年Rochejean(ドゥー県))1 Claude et Pierre Dornier(1564年Dole(ドゥー県))2 Claude Dornier(1608年Rougemont(オート=サオーヌ県):司教座聖堂参事会員)3 Nicolas Dornier, fils de Grandpierre Dornier(1660年ドゥー県)4 Claude-Pierre Dornier(1746年Dampierre-sur-Salon(オート=サオーヌ県))5
語源は古プロヴァンスdorna「水瓶(urne)、陶器製の水差し型手付き壺(cruche)」10, 11の動作主派生名詞に由来し、
その様な容器を扱う商人か陶工を指す姓である。これらの語はラurnaから発生しており、後に前置詞deが膠着してdornaの様な形に転じたもの
らしい。
[Morlet(1997)p.343,Dauzat(1945)p.174,Kohlheim(2000)p.195]
◆古プロヴァンスdorna←ラurna(第1変化女性名詞)「水瓶、水差し、壺、籤壺(クジツボ)、投票箱、骨壷」(仏urne「骨壺、古代の水瓶、投票箱」,伊urna
「壺、投票箱、棺」,コルシカürna「骨壺、投票箱、(小)箱」,西urna「投票箱、壺」,葡urna「骨壺、投票箱、小箱」,ルーマニアurnã「骨壺」)←
*urc-nā←(?)外来語(ラurceus「取っ手のついた壺」,orca「大壺」,ギ(h)úrkhē「水差しの類、塩漬けにした魚を入れる陶器製容器」)
12。語源不明。ラテン語の祖形を*urc-nāとする解釈は、ドイツの印欧語学者ブルークマン(Karl Brugmann)の発想によるものらしい。
外来語由来説としては、ヘブライ'ăraq「土」と関係付ける説がある13。他に以下の説がある。
●ラūrere「焼く」由来説14・・・urnaの原義を「土を焼いて作った容器」と想定する。動詞ūrereの完了
能動態はussī、過去分詞はustus、又抽象名詞を作る接尾辞が後続して派生したustiō「焼く事、火傷」
等の例から動詞語根はus-である事が解る(PIE*eus-「焼く」のゼロ階梯に由来する。ūrereの形は、有史以前に他の動詞との
類推から、動詞語根と動詞形成接尾辞との間に母音が挿入された為か?。uが長母音化している理由は良く判らない)。このus-に名詞形成接尾辞-naが付いたらurnaなどという形には発達しないが、
不定詞ūrereから逆生したur-という語根からurnaが作られたとすれば、一応説明が付いた様には見える。但し、今度はūが短母音化している理由が説明
できない。何だか胡散臭い説である。
●バルト語の「簗(ヤナ)」を意味する単語と関係付ける説13・・・リトアニアwáržas「魚を獲る為の籠、簗」,ラトヴィアwarʃa「簗」と関係付ける説が、
ヴァルデのラテン語語源辞典に載っている(元々はVaničekとBezzenbergerの説らしい)。これらのバルト語の単語の素性は不明で、他の辞書ではその存在を確認できない
。vでなくw、そしてʃというリトアニア語とラトヴィア語の表記には普通用いられない文字が混じっている点が、胡散臭さを倍増させている。素人目には、PIE*werg-「囲う、閉じる」
(ギeirgmós「牢獄」,古アイルランドfraig「壁」,サンスクリットvrajá-「障害物」,古ペルシアvardana-「地方自治体」)15に遡る様に見受けられる
けれども、学者がどう判断しているのか私は知らない(ポコルニーの辞典ではPIE*werg-「囲う」の項に、上記のバルト語語彙を載せていない)。尚、PIE*werg-自体は、PIE*wer-「覆う」から派生した拡張形である。
1 "La Nouvelle revue héraldique, historique et archéologique. vol.11"(1933) 2 Jules Gauthier "Inventaire sommaire des Archives départementales antérieures à 1790: archives
civiles, série B : chambre des comptes de France-Comté. vol.3"(1895)p.123 3 "Inventaire sommaire des Archives départementales antérieures à 1790, Haute-Saône: Archives
ecclésiastiques, Séries G, H. vol.5"(1901)p.5 4 A. Dornier "Répertoire sommaire des titres de familles conservés aux archives du Doubs : Série E -
Supplément."(1918)p.232 5 Louis Suchaux "Galerie biographique du département de la Haute-Saône. vol.1"(1864)p.118 6 http://www.dornier.co.za/about 7 Joachim Wachtel "Claude Dornier: ein Leben für die Luftfahrt."(1989)p.11 8 Bernd Ottnad, Fred Ludwig Sepaintner "Baden-Württembergische Biographien."vol.3(2002)p.42 9 Dornier-Werke GmbH "50 Jahre Dornier. 1914 - 1964."(1964)p.13、Dornier GmbH "Dornier: die Chronik des ältesten deutschen
Flugzeugwerks."(1983)p.11 10 de Rochegude(1819)p.101 11 Morlet(1997)p.345 12 Chantraine(1968-80)p.1161、Buck(1949)p.347、ロベール仏和大辞典p.2480、Boisacq(1916)p.1006 13 Walde(1938-1956)p.859 14 英語語源辞典p.1509、http://en.wiktionary.org/wiki/urna#Latin 15 Pokorny(1959)p.1168
執筆記録:
2011年7月20日 初稿アップ