Đoković ジョコビッチ(セルビア、クロアチア)
概要
ギGeṓrgios「農夫の(子)」という男子名のイタリア語形Giorgioの借用であるセルビア人男名Đorđe、Đorđoの短縮形ヂョコ(Đoko)に由来。
詳細
父称姓。セルビアのプロテニス選手ノバク・ジョコビッチ(ノヴァク・ヂョコヴィッチ:以下、他の語彙の片仮名転写との整合を図るため、 原音に最も近い表記ヂョコヴィッチを用いる)(Novak Đoković:1987.5.22 Beograd~)の姓。先祖はモンテネグロ南部の村チェヴォ(Čevo)の出身である ヂョコ・ダミャノヴィッチ(Đoko Damjanović)という男で、1730年頃に自身のファーストネームを元にヂョコヴィッチ姓を新しく造り家名とし、 同国中部の都市ニクシッチ(Nikšić:同国では二番目に大きい都市)北部近郊のヤセノヴォ・ポリェ(Jasenovo Polje)村に移り住んだ。その子孫、 テニス選手の曾祖父ネヂェリコ・ヂョコヴィッチ(Neđeljko Đoković)は戦禍から逃れる為、1928年に現コソヴォ共和国メトヒヤ地方 北部の小村ヴォチニャク(Voćnjak)に家族を連れて移住した。1951年初頭には、テニス選手の祖父ヴラヂミル(Vladimir)は更に東に移り、 コソヴォ地方北部の都市ミトロヴィツァ(Kosovska Mitrovica)に移住、更にその息子でテニス選手の父であるスリヂャナ(Srđana)は1981年に ベオグラードに移り住んだ1。別のネット資料によると、先祖ヂョコ・ダミャノヴィッチが改名したのは、彼がある トルコ人高級官僚(セルボ=クロアティアaga,英agha)を殺害する上で、自身の親族や関係者に罪が及ばないようにする為に計画的に行ったものらしい 2

男子名ヂョコ(Đoko)はセルビアでは良く見られるが、クロアチアでは逆に非常に稀らしい3。この男名はヂョルヂェ (Đorđe)やヂョルヂョ(Đorđo)という男性名から派生した愛称形で、後半要素の-koは指小辞。元となった名前を見れば何となく解るように、英語の ジョージ(George)と同語源で、ギリシア語のGeṓrgiosに遡る4, 5。直接的にはGeṓrgiosのイタリア語形ジョルジョ (Giorgio)からの借用である。Geṓrgiosはギgeōrgós「農夫」(ギgê「大地」+ギérgon「仕事」)の派生形容詞で、「農夫の(子)」が原義である。 実際に原形と愛称形が同一人物に用いられている例が現在も見られ、例えば、ブルガリアで活躍したセルビア人俳優のヂョコ・ロスィッチ (Đoko Rosić)、本名ヂョルヂェ・ロスィッチ(Đorđe Rosić:1932~2014)がいる6。 ヂョコヴィッチという姓は、この短縮形男子名Đokoに物主形容詞(所有形容詞)形成接尾辞-ovと指小辞-ićが接続したもので、「農夫ちゃんの 息子ちゃん」みたいな意味の苗字ということになる。
1 https://crnogorskapitanja.wordpress.com/2012/09/28/dokovic-je-polu-crnogorac-polu-hrvat/
2 http://nedeljnik.co.rs/sr/2014/02/06/dnevni-magazin/ovo-je-%C4%8Dovek-po-kom-je-novak-dobio-ime
3 http://imehrvatsko.net/namepages/view/first_name/djoko
4 http://opusteno.rs/zanimljivosti-f19/spisak-poreklo-i-znacenje-srpskih-imena-na-slovo-dj-t16406.html
5 http://sr.wikipedia.org/sr-el/%D0%93%D0%B5%D0%BE%D1%80%D0%B3%D0%B8%D1%98%D0%B5
6 http://sr.wikipedia.org/sr-el/%D0%82%D0%BE%D0%BA%D0%BE_%D0%A0%D0%BE%D1%81%D0%B8%D1%9B

更新履歴:
2015年2月4日  初稿アップ
PIE語根Đ-o-k-ov-ić: 1.語源不明; 2.*werg-「行う」; 3.*-ko- 形容詞・名詞形成接尾辞; 4.*-wo- 形容詞形成接尾辞; 5.未調査

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