概要
古英burg「砦、町」に由来するサフォーク州のバラ(Burgh)という町の名前から。
詳細
Ailricus de Burc(1066年Suffolk:DB)1
John de Burk(1274年Somerset)1, 2
地名姓。姓の最初の記録"Ailricus de Burc"はサフォーク州の例で、同州Suffolk Coastal地域の都市バラ(Burgh)に由来する。
地名は、古英burg,burh「砦、町」3に由来し、姓自体の語形はこの単語のノルマン=フランス語の発音に由来して
いる4。
この、ノルマン=フランス語の発音を反映していることから、ハリソンやバーバーによれば古高独burg,古仏burg,burc「砦」に由来する
フランスの地名に由来する可能性も指摘している。
所で、この姓はアイルランドに良く見られ、主に同国西部、特にゴールウェイ(Galway)、メイヨー(Mayo)、ロスコモン(Roscommon)、
ティペラリー(Tipperary)、リムリック(Limerick)各州に多い。これは、ヘンリー2世に従って1171年にアイルランドに渡ってきて帰化した
ノルマン人の一派の一人であった、ウィリアム・デ・ブルゴ(William de Burgo)という臣下が先祖である。彼は、後にアルスター伯
(Earl of Ulster)となり、その子孫はアイルランドにおけるアングロ=ノルマン系の移住者の中でも最も栄えた重要な一族となった。
[Reaney(1995)p.74,Harrison(1912-1918)p.58,Bardsley(1901)p.149,MacLysaght(1999)p.30,Arthur(1857)p.86,Barber(1903)p.100,
ONC(2002)p.101]
1 Reaney(1995)p.74
2 Bardsley(1901)p.149
3 Köbler aeW B項p.69
4 Reaney(1995)p.74 恐らく閉音節末の有声破裂音の無声化を示すドイツ語の音変化(例えば、古高独burg「砦」→中高独burc)
と平行した音韻変化が、フランス語の源流の一つとなったフランク語でも起きたのだと思う(ちゃんと調べてないので、確証が持てないが)。
古仏burg,burc「砦」の表記からも、それが伺える。この、音声特徴がノルマン人によってイングランドにもたらされた。但し、リーニーに
よれば、この特徴はイングランドに根付かなかったらしい。MEDのB巻 vol.5 p.1223のburgh(n.(1))「町、砦」によると、中英burcの形が
記録されているが(更にONCは中英burkの形も録す(p.101))、これがノルマン=フランス語の影響下で生まれた語形かは良く判らない。
執筆記録:
2011年8月4日 初稿アップ
PIE語根Burke:1.*bhergh-「丘、要塞」
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