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Bell ベル
概要
①「鳴鐘係」「鐘という屋号の建物の住人、鐘楼の住人」を意味する姓。
②「立派な人、善良な人、優秀な人」の意。
③「吠える者」、若しくは「美しい人」を意味する個人名より。
④エリザベスのスペイン語形Isabelの短縮名より。
詳細
Seaman Belle(1181年ロンドン)1
serlo Belle(1190年Yorkshire)1
Roger del Bel(1209年Norfolk)1
Rob' de la belle(1222年ロンドン:DB)2
Rogerus atte Bell(1327年Somerset)2
Johannes atte Belle(1332年ロンドン)2

①職業姓、屋号姓、居住地姓。古英belle「鐘」3,中英bel(le)「鐘」2(>英bell)に 由来し、「教会の鐘鳴らし係、鳴鐘係」を意味する姓(この場合は、上掲の姓古形一覧の最初の二例が該当する)。或いは、鐘の看板を掲げた店、 特に居酒屋、宿屋や家屋の住人が名乗った姓(この場合は、上掲の姓古形の前置詞を伴うものが該当)。また、「教会の住人、鐘楼の住人」を 指す姓の可能性も有る。MEDに挙げる古い用語例には、この屋号を用いた多くの居酒屋・宿屋がみえる。更に同書によると、"みだらな家 (bawdy house)"も屋号「鐘」を名乗ったと指摘しているが、これは遊郭の事を指しているか。あまり英国ではこの屋号を持った宿屋は多くない らしい。パスクウィン(Pasquin)という人が1612年に著した著作"Nightcap"に、"Peter at the Bell"という親方の名を挙げており、金持ちの 反物屋(linen-draper)としている4
[Reaney(1995)p.37,Harrison(1912-1918)p.28,Bardsley(1901)p.92,Arthur(1857)p.68,ONC(2002)p.59,苅部(2011)p.27,英語語源辞典p.116]
Hugo bel/Robertus bellus(1148年Hampshire)1
Robert le bel(1186-1200年Norfolk)1
Robertus le Bel(1207年)5
Robert le Bell(1239年Bristol)6
Hugh le Bel(1273年Oxfordshire)6
Johannes le Bel(1302年)5

②ニックネーム姓。中英bel(e)「公平な、立派な、良い、優秀な」5,古仏bel(e)「美しい」 7に由来する。
[Reaney(1995)p.37,Harrison(1912-1918)p.28,Lower(1860)p.,Bardsley(1901)p.92,Arthur(1857)p.68,MacLysaght(1999)p.16,ONC(2002)p.59 ,苅部(2011)p.27,英語語源辞典p.116]
Ailuuardus filius Belli(1086年Suffolk:DB)1
Nicholas fil. Bele(1273年Bedfordshire)6
Ricardus filius Bell(1279年Huntingdonshire)1
Osbertus filius Belle(1297年Yorkshire)1

③父称姓。古期英語の男子名ベッラ(Bella)8に由来する。サール(Sarle)は"bellan ford"という古期英語の 消失地名を挙げている8。他にも、バッキンガムシャーのベリンドン(Bellingdon:初出Belindene(1212年)) 9、サフォークのベルステッド(Belstead:初出Belesteda(m)(1086年:DB))10等の 地名の第一要素にも現れている男名である。恐らく、古英bellan「吠える」(>英bell)の語幹から作り出された 古いn語幹名詞の動作主派生名詞に由来し、「吠える者」を意味する(マルピコス説:結果として、①の「鐘」を意味する姓と同根となる)。 或いは、古仏bel(e)「美しい」に由来する個人名ベッレ(Belle)を語源とする姓である(但し、前述の地名の語源は古期英語起源 )。リーニーやONC等は古仏bel(e)「美しい」由来説を採るが、私は両者が混淆したのではないかと考えている。
[Reaney(1995)p.37,Harrison(1912-1918)p.28,ONC(2002)p.59,苅部(2011)p.27]
④母称姓。女名イザベル(Isabel)の愛称形ベル(Bell)に由来する。イザベルはエリザベス(Elizabeth)のスペイン語形。
[Reaney(1995)p.37,Harrison(1912-1918)p.28,Bardsley(1901)p.92,ONC(2002)p.59,苅部(2011)p.27]
◆古英belle「鐘」←ゲルマン*bellōn(n語幹女性名詞)「鈴」(中低独belle「鐘」,蘭bel「鐘」)←*bellan「吠える」(古英,古高独bellan「吠える」) ←PIE*bhel-「叫ぶ、大声を上げる」(古プロシアbillit「話す、喋る」,トカラA päl-「賞賛する」)11
1 Reaney(1995)p.37
2 MED B項vol.2 p.701-702
3 Köbler aeW B項p.21
4 Harrison(1912-1918)p.28
5 MED B項vol.2 p.697
6 Bardsley(1901)p.92
7 Godefroy(1880-1902)vol.1 p.615
8 Searle(1969)p.86
9 EPNS vol.2(1925)p.224
10 Sandred(1963)p.186
11 英語語源辞典p.116、Watkins(2000)p.10、Pokorny(1959)p.123-124、Köbler idgW B項p.28

執筆記録:
2011年8月4日  初稿アップ
PIE語根①Bell:1.*bhel-4「叫ぶ、大声を上げる」
②Be-l-l:1.*deu-2「行う、良く見せる、尊敬する」;2.*-no- 形容詞形成接尾辞;3.*-lo-形容詞形成接尾辞
④Bell:1.セム語根

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