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概要
「ヴィルヘルム(Wilhelm)の息子」を意味する姓。
詳細
Otto filius Willehelmi(1214年Ravensburg)1
父称姓。正しくはヴィルヘルミ。ラインラント=プファルツ州、ヘッセン州に多い姓。
ドイツ語の男子名ヴィルヘルム(Wilhelm)にラテン語の男性名詞単数属格語尾-ī2を
付して生じた姓で、「Wilhelmの息子」を意味する。ギリシア語やラテン語の古典語に傾倒した人文主義者達や
それに倣った人々によって作られた姓である。この屈折語尾は、同じラテン語起源の星の名前であるアルファ・ケンタウリ
(英Alpha Centauri)の後半要素にも見えており、ラCentaurus「ケンタウロス」の主格語尾-usと入れ替えた形が
Centaurīで、文字通り「ケンタウルス座のα星」を意味する。
男名Wilhelmは古高独の男名ウィッラヘルム(Willahelm)3の後裔で、
古高独willo「意思」+古高独helm「兜」を合わせて作られた名前である。
[Gottschald(1982)p.531,Kohlheim(2000)p.719,Bahlow(2002)p.554,Naumann(2007)p.286,ONC(2002)p.665]
◆独Wille「意思」←中高独wille「意志、好み」←古高独willo「意志、望み、要求」←ゲルマン*wiljōn(n語幹男性名詞)「意志」
(古英willa「意志、意図、望み、要求」(>英will),古フリジアwilla「意志」,古ザクセンwillio「意志、慈悲、喜び」
(>オランダwil),古ノルドvili「意志」,ゴートwilja「意志、満足」)←PIE*wel-「欲する」。
1 Bettina Elpers"Regieren, Erziehen, Bewahren: mütterliche Regentschaften im
Hochmittelalter"(2003)p.141の註65
2 語源不明の属格形成接尾辞で、ラテン語とケルト語派にのみ見られる
(cf.アイルランドfer「男」の属格fir。語末に付いた属格語尾 -īの為、ウムラウトを起こして語幹母音がe→iに変化している。
-ī自体は消失:参考アンドレ・マルティネ著『「印欧人」のことば誌』,p.227,p.108)。
3 Förstemann(1966)p.1601
4 英語語源辞典p.1567、Watkins(2000)p.97、Pokorny(1959)p.1137、Köbler idgW W項p.42
執筆記録:
2010年11月22日 初稿アップ
PIE語根Wil-helm-i:1.*wel-2「欲する」;2.*kel-
2「覆う、隠す」;*3.語根不詳
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