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Ingolstadt インゴルシュタット(地名)
概要
バイエルンにある同名の都市の名だが、姓としては存在しない。「Ingold(人名)の地所」を意味する。
詳細
地名。中高独期の古い人名でUlrich Ingolsteter 1があり、これが今の所確認出来ている唯一の近い姓だが Ingolstadtの綴りでの姓の用例を見ない。いずれにせよ、ドイツ南部バイエルン州の古都市インゴルシュタット (Ingolstadt(91Mc56))の名である。 地名の最初の記録は、カール大帝が806年2月6日に書いた帝国分割文書(Reichsteilungsurkunde)に見えるもので(9世紀写本) 、Ingoldestat 2とある。後、Ingoldesstat(817年:10/11世紀写本) 2の綴りも確認されている。地名の字義は「インゴルド(Ingold)の地所」である。Ingold 3は、古高独Ing(wio)「イングウィオ神(或いは勇者の名と考えられている)」 4と古高独waltan「支配する」の語幹よりなる古い男子名である。辻原康夫著『世界の地名 ハンドブック』(三省堂、1995)のインゴルシュタット項に、その地名は「村落共同体」の意とあるが、どうしてその様な 意味が引き出されるのか理解に苦しむ解釈である。
[Reitzenstein(2006)p.123] 
◆古高独Ing(wio)←ゲルマン*Ingwaz(a語幹男性名詞)「イングウィオ神、豊饒神」(古英Ing,ゴートenguz)←(?)PIE* engw-「鼠蹊部」(ギadn「腺」,ラ inguen「鼠蹊部」,古ノルドkkr「腫れ」)印欧語根から ゲルマン語への意味の変遷は、「鼠蹊部」→「男根」→「増大、豊饒」か3

1 Kohlheim(2000)p.28
2 Reitzenstein(2006)p.123
3 Förstemann(1966)sp.786
4 Kohlheim(2000)p.761
5 英語語源辞典p.717、Watkins(2000)p.23、Pokorny(1959)p.319、梅田(2000)p.276

執筆記録:
2010年11月22日  初稿アップ
PIE語根:Ing-ol-sta-dt:1.(?)*engw「鼠蹊部」; 2.*wal-「強くなる」;3.*stā-「立つ」;4.*-ti-中性名詞形成語尾

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